「さっきから」ずっと家じゅうに、モノを配って歩くみたいなことをしていない?」。一日の終わりによく思う。その日使ったものをしまうため、部屋から部屋へと動き回る。
バッグの中身も、財布、名剌入れ、手帳などはひとまとめにしておくが、それ以外の日によって違う持ちものが結構ある。
折りたたみ傘を玄関収納に戾し、保泠バッグをキッチンに戻し、ストールをクローゼットに戻し、日焼け止めクリームを洗面所に戻し、書類を本棚に戻し……。出かけるときは急いでいるのでほぼ無心だが、片付ける段になり、こんなにもあちこちからモノをかき集めてきていたのかと(41)。
元の場所へ運んで、形を整え、入れることを繰り返していると、10分や20分はあっという間。一日のうちどれくらいの時間、モノをしまうのに費やしていることか。
今日じゅうに(42)、何も死ぬわけではない。後回しして消耗を防ぎ、明日に備える方がいいのでは。
そう考え、ある晚サボることにした出張から帰ったキャリーバッグを、歯ブラシだけ抜
きそのままにして寝る。
翌朝、着替えのはみ出たキャリーバッグが床にあるのを見て、どっと疲れをおぼえた。
そのとき悟った。しなくていいようでいて、やはり必要な(43)。
元気は「元」の「気」と書く。一日の活動で昂ったり乱れたりした気が、本来の状態に立ち返る。モノを所定の地位置に戾すのは、その象徴的行為である。元気を「もらう」とよく言うが、私にとって元気はまず、付加より前にリセットだ。睡眠時間が多少短くなっても、今日のうちに(44)。